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ステムマスタリングとは?通常マスタリングとの違いを解説

ステムマスタリングと通常マスタリングの違いを初心者向けに解説。ステムの定義、メリット・デメリット、コスト比較、セルフマスタリングとの使い分けまで詳しく紹介します。

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マスタリングには2種類ある#

マスタリングと聞くと、完成したミックス音源を最終調整する工程をイメージする方がほとんどでしょう。

しかし実は、マスタリングには大きく分けて2つの手法があります。

通常マスタリング(ステレオマスタリング): 完成した2ミックス(ステレオファイル1つ)に対して処理を行う、最も一般的な方法です。

ステムマスタリング: 楽曲をパート別のグループ(ステム)に分けて書き出し、 それぞれに個別の処理を行ってからまとめ上げる方法です。

この記事では、ステムマスタリングの仕組み、 通常マスタリングとの違い、そしてどちらを選ぶべきかを詳しく解説します。

ステムとは何か#

ステム(Stem)とは、楽曲を構成する複数のトラックをグループごとにまとめて書き出したオーディオファイルのことです。

例えば、10トラックの楽曲であれば、以下のように4〜6つのステムにまとめるのが一般的です。

ステム名含まれるトラック例
ドラムステムキック、スネア、ハイハット、タム、オーバーヘッド
ベースステムベースギター、シンセベース
ボーカルステムリードボーカル、コーラス、ハモリ
楽器ステムギター、ピアノ、シンセ、ストリングス
FXステムリバーブ、ディレイのリターン、SE

各ステムはステレオファイルとして書き出され、 すべてのステムを同時に再生すると元のミックスと同じ音になるように作られます。

ステムとパラデータの違い#

ステムと混同されやすいのが「パラデータ(マルチトラック)」です。

  • パラデータ: 各トラックを1つずつ個別に書き出したもの(例:キック単体、スネア単体)
  • ステム: 複数のトラックをグループにまとめて書き出したもの(例:ドラム全体で1ファイル)

パラデータはミキシングに使うもの、ステムはマスタリングに使うもの、と理解しておきましょう。

ステムマスタリングの仕組み#

ステムマスタリングでは、エンジニアが各ステムに対して個別のEQ、 コンプレッション、サチュレーションなどの処理を行います。

処理の流れ#

  1. 各ステムの個別処理

    • ドラムステム: 低域の締め、トランジェントの調整
    • ベースステム: ローエンドの処理、サチュレーション
    • ボーカルステム: 高域の処理、ディエッシング
    • 楽器ステム: 周波数の住み分け、ステレオイメージ
  2. ステム同士のバランス調整

    • 各ステムの音量バランスを微調整
    • 帯域が衝突している部分を個別に修正
  3. マスターバスでの最終処理

    • 通常マスタリングと同様のEQ、コンプ、リミッティング
    • ラウドネスの最終調整

つまりステムマスタリングは、「ミキシングの最終調整 + マスタリング」を一体化した工程と言えます。

通常マスタリングとの比較#

修正範囲の違い#

これが最大の違いです。

通常マスタリング: 2ミックスに対して全体的な処理しかできません。 「ボーカルだけ少し前に出したい」「キックの低域だけタイトにしたい」といった個別の修正は困難です。

ステムマスタリング: 各パートを独立して処理できるため、 「ボーカルの3kHzだけ下げる」「ベースにサチュレーションを追加する」といった細かい修正が可能です。

柔軟性#

項目通常マスタリングステムマスタリング
ボーカルの音量調整×
ドラムのパンチ調整△(限定的)
ベースの周波数修正△(限定的)
全体のEQ調整
ラウドネス調整
ステレオ幅の調整○(パート別に可能)

音質面#

ステムマスタリングの方が音質が良いかというと、必ずしもそうではありません。

ミックスが優れている場合、通常マスタリングで十分にプロ品質の仕上がりになります。 ステムマスタリングが真価を発揮するのは、ミックスに修正が必要な場合です。

コスト比較#

マスタリングにかかるコストは、手法によって大きく異なります。

日本国内の相場(2026年時点)#

サービス1曲あたりの料金備考
通常マスタリング(個人エンジニア)¥5,000〜¥15,000経験と実績による
通常マスタリング(スタジオ)¥15,000〜¥50,000機材と環境の差
ステムマスタリング(個人エンジニア)¥10,000〜¥30,000ステム数で変動
ステムマスタリング(スタジオ)¥30,000〜¥80,000ハイエンド環境
オンラインAIマスタリング¥0〜¥3,000手軽だが制限あり

ステムマスタリングは通常マスタリングの1.5〜2倍の料金が一般的です。 ステム数が増えるほど作業量が増えるため、料金も上がります。

コスパの考え方#

  • 予算に余裕がある場合: ステムマスタリングで最高品質を目指す
  • 予算が限られている場合: ミックスを丁寧に仕上げてから通常マスタリングに出す
  • DIYで済ませたい場合: セルフマスタリング(後述)

セルフマスタリングとの使い分け#

セルフマスタリングが向いているケース#

  • デモ音源やSoundCloudへのカジュアルなアップロード
  • 予算がゼロの場合
  • マスタリングの学習目的
  • 急ぎのリリース(エンジニアとのやり取りの時間がない場合)

プロに依頼すべきケース#

  • 商用リリース(Spotify、Apple Music等への配信)
  • レーベルやコンテストへの提出
  • ミックスに不安がある場合(ステムマスタリング推奨)
  • ハイレゾやアナログ盤のリリース

DeckReadyの活用#

セルフマスタリングとプロ依頼の中間的な選択肢として、 DeckReadyのようなオンラインマスタリングツールがあります。 プロのエンジニアほどの柔軟性はありませんが、 プリセットベースで配信基準を満たすクオリティに仕上げることが可能です。

特に、セルフマスタリングの経験がなく、予算もプロに依頼するほどはない——という場合に最適な選択肢です。

ステムの書き出し方#

ステムマスタリングを依頼する場合の、ステムの書き出し手順です。

基本ルール#

  1. すべてのステムの長さを同じにする: 曲の最初から最後まで同じ長さで書き出す
  2. エフェクト処理はそのまま: リバーブやディレイはかけた状態で書き出す(エンジニアと要相談)3. フェーダーは0dBの位置で: ミックス時のバランスを保つため4. クリッピングしていないことを確認: 各ステムのピークが0dBを超えていないこと5. マスターバスの処理は外す: マスターバスのコンプやリミッターは外して書き出す

推奨ステム分割#

ジャンル推奨ステム数分割方法
ポップス4〜5ドラム / ベース / ボーカル / 楽器 / FX
EDM4〜6キック / ベース / リード / パッド / ボーカル / FX
ロック4ドラム / ベース / ギター / ボーカル
ヒップホップ3〜4ビート / ベース / ボーカル / サンプル

どちらを選ぶべきか?判断フローチャート#

以下の質問に答えることで、最適な手法を判断できます。

Q1: ミックスに自信がありますか?→ Yes: 通常マスタリングでOK→ No: Q2へ

Q2: 予算に余裕がありますか?→ Yes: ステムマスタリングを推奨→ No: Q3へ

Q3: ミックスをやり直す時間がありますか?→ Yes: ミックスを修正してから通常マスタリング→ No: DeckReadyなどのオンラインツールでセルフマスタリング

まとめ#

ステムマスタリングは、ミックスの問題を修正しながらマスタリングを行える強力な手法です。 通常マスタリングでは対応できないパート単位の調整が可能で、 最終品質を大きく向上させることができます。

ただし、コストは通常マスタリングの1.5〜2倍。 ミックスの完成度が高い場合は、通常マスタリングで十分です。 自分の楽曲の状態と予算に合わせて、最適な手法を選びましょう。

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