OBSの音声フィルター完全ガイド【配信音質を劇的改善】
OBS Studioの音声フィルター(ゲイン、ノイズゲート、コンプレッサー、リミッター)の設定方法を完全解説。各フィルターの役割と推奨パラメータ、適用順序、DeckReadyとの併用テクニックまで。
はじめに:OBSの音声フィルターで配信音質は劇的に変わる#
OBS Studio(Open Broadcaster Software)は、 配信者にとって最も重要なツールです。 映像の設定にはこだわるのに、音声フィルターをデフォルトのまま使っている配信者は意外と多いです。
しかし、OBSに搭載されている音声フィルターを正しく設定するだけで、 配信の音声品質は劇的に向上します。 高価なオーディオインターフェースやミキサーがなくても、 ソフトウェアの設定だけで「プロ級の音質」に近づけることが可能です。
この記事では、OBSの各音声フィルターの役割と推奨設定値を、 初心者にもわかりやすく解説します。
OBSの音声フィルターの基本#
フィルターの追加方法#
OBSで音声フィルターを追加する手順は以下の通りです。
- OBSの音声ミキサーで、マイクソースの歯車アイコンをクリック
- 「フィルター」を選択3. 左下の「+」ボタンで新しいフィルターを追加4. フィルターの種類を選択
フィルターの適用順序(最重要)#
音声フィルターは上から順に処理されるため、適用順序が非常に重要です。 順序を間違えると、意図した効果が得られないだけでなく、音質が悪化することもあります。
推奨適用順序
1. ノイズ抑制(Noise Suppression)
2. ノイズゲート(Noise Gate)
3. ゲイン(Gain)
4. コンプレッサー(Compressor)
5. リミッター(Limiter)
この順序の理由を以下で詳しく説明します。
各フィルターの詳細設定#
1. ノイズ抑制(Noise Suppression)#
役割:環境ノイズ(エアコン音、ファン音、PCの動作音など)を自動的に除去する
OBSには2つのノイズ抑制方式があります。
| 方式 | 特徴 | CPU負荷 | 品質 |
|---|---|---|---|
| RNNoise | AIベースの高品質ノイズ除去 | やや高い | 非常に良い |
| Speex | 従来型のノイズ除去 | 低い | 普通 |
推奨設定
- 方式:RNNoise(PCスペックに余裕がある場合)
- 抑制レベル(Speexの場合):-30〜-20dB
なぜ最初に適用するのか
ノイズ抑制を最初に適用することで、後続のフィルター(特にコンプレッサー)がノイズを増幅してしまう問題を防げます。 ノイズが残った状態でコンプレッサーをかけると、 声が小さい時にノイズが持ち上がってしまいます。
2. ノイズゲート(Noise Gate)#
役割:設定した閾値以下の音を完全にカットする。 話していない時の小さなノイズを除去するのに効果的。
推奨設定
| パラメータ | 推奨値 | 説明 |
|---|---|---|
| 閉鎖閾値(Close Threshold) | -40〜-35 dB | この値以下になるとゲートが閉じる |
| 開放閾値(Open Threshold) | -35〜-30 dB | この値以上になるとゲートが開く |
| アタック(Attack) | 5〜10 ms | ゲートが開くまでの時間 |
| 保持(Hold) | 50〜100 ms | ゲートが開いた状態を維持する時間 |
| リリース(Release) | 50〜100 ms | ゲートが閉じるまでの時間 |
設定のコツ
- 閉鎖閾値と開放閾値の差は3〜5dBが理想的。差が小さすぎるとゲートがバタつく(チャタリング)
- 保持時間は長めに設定すると、言葉と言葉の間の短い無音でゲートが閉じることを防げる
- アタックを長くしすぎると、話し始めの音が切れてしまう
注意点
ノイズゲートは「音を通すか、完全にカットするか」の二択なので、 閾値の設定が不適切だと不自然さが目立ちます。 小声で話す場面が多い配信者は、閾値を低め(-45dB程度)に設定しましょう。
3. ゲイン(Gain)#
役割:マイクの入力音量を増減させる。 マイクの出力が小さい場合に底上げするために使用。
推奨設定
- ゲイン値:0〜+6dB(必要に応じて調整)
設定の基準
OBSの音声ミキサーで、普通に話している時にメーターが**-12〜-6dBFS**の範囲に収まるようにゲインを調整します。
- メーターが-20dB以下でしか反応しない → ゲインを上げる
- メーターが0dBに張り付いている → ゲインを下げる(またはマイク側のゲインを下げる)
注意点
ゲインを上げすぎると、ノイズも一緒に増幅されます。 まずマイク本体やオーディオインターフェースの入力ゲインを適切に設定し、 OBSのゲインフィルターは微調整用として使いましょう。
4. コンプレッサー(Compressor)#
役割:音量の大小の差(ダイナミックレンジ)を縮める。 叫んだ時の大きな声と、小声で話す時の音量差を均一化する。
推奨設定
| パラメータ | 推奨値 | 説明 |
|---|---|---|
| 比率(Ratio) | 3:1〜4:1 | 閾値を超えた音をどの程度圧縮するか |
| 閾値(Threshold) | -18〜-14 dB | この値を超えた音に圧縮が適用される |
| アタック(Attack) | 3〜6 ms | 圧縮が始まるまでの時間 |
| リリース(Release) | 80〜120 ms | 圧縮が解除されるまでの時間 |
| 出力ゲイン(Output Gain) | +2〜+4 dB | 圧縮で下がった分の音量を補正 |
| サイドチェインソース | なし | 通常は設定不要 |
各パラメータの詳細解説
比率(Ratio)
3:1は「閾値を超えた分の音量を3分の1に圧縮する」という意味です。 例えば、閾値を12dB超えた音は4dBの超過に圧縮されます。
- 2:1:ソフトな圧縮(トーク配信向け)
- 3:1〜4:1:標準(ゲーム実況向け)
- 6:1以上:強い圧縮(叫びが多い配信向け)
閾値(Threshold)
普通の声量で話した時のレベルのやや下に設定するのがポイントです。 閾値が低すぎると常に圧縮がかかり、声が不自然に平坦になります。
アタック(Attack)
短すぎると声の立ち上がりが潰されて「もこもこ」した音に。 長すぎると圧縮が間に合わず、ピークが抑えられません。 3〜6msが最適なバランスです。
5. リミッター(Limiter)#
役割:音量の上限を設定し、それ以上の音を絶対に通さない。 クリッピング(音割れ)を防止する最後の砦。
推奨設定
| パラメータ | 推奨値 | 説明 |
|---|---|---|
| 閾値(Threshold) | -3〜-1 dB | この値以上の音はカットされる |
| リリース(Release) | 60〜100 ms | 制限が解除されるまでの時間 |
なぜ-1dBではなく-3dBなのか
配信プラットフォーム(Twitch、YouTube)は、 受信した音声をさらに圧縮・変換するため、0dBギリギリの音声はプラットフォーム側の処理で歪む可能性があります。 -3dBのヘッドルームを確保することで、この問題を防げます。
フィルターチェーンの動作確認#
テスト方法#
フィルターを設定したら、以下の方法で動作を確認しましょう。
- 小声テスト:ゲートが正常に開閉するか確認
- 普通の声テスト:コンプレッサーのゲインリダクションが2〜6dB程度か確認3. 大声テスト:リミッターが作動してクリッピングが発生しないか確認4. 無音テスト:話していない時にノイズが聞こえないか確認
OBSの録画機能でモニタリング#
OBSの「録画」機能を使って30秒程度の音声を録音し、 再生して確認するのが最も確実な方法です。 ヘッドフォンでモニタリングしながら設定すると、リアルタイムで調整できます。
DeckReadyとの併用テクニック#
DeckReadyが解決する問題#
OBSの音声フィルターはマイク音声のリアルタイム処理に優れていますが、 配信で使用するBGMや効果音の音量統一には対応できません。
ここでDeckReadyが力を発揮します。 配信で使用するBGM素材を事前にDeckReadyで処理しておくことで、以下の問題を解消できます。
- 曲ごとの音量差をなくす
- ジャンル間の体感音量差を統一
- 適切なラウドネスターゲットに合わせる
推奨ワークフロー#
- 配信で使用するBGM楽曲をすべて準備
- DeckReadyで一括ラウドネス統一(ターゲット:-20 LUFS)3. 処理済みファイルをOBSのメディアソースとして登録4. OBSのミキサーでBGMソースの音量を微調整
BGM用の推奨プリセット#
| 配信スタイル | DeckReadyプリセット | ターゲットLUFS |
|---|---|---|
| ゲーム実況 | Standard | -20 LUFS |
| トーク配信 | Lounge | -22 LUFS |
| DJ配信 | Club | -14 LUFS |
| 作業配信 | Lounge | -24 LUFS |
環境別のおすすめ設定プリファイル#
ゲーム実況向け#
ノイズ抑制:RNNoise
ノイズゲート:開放 -32dB / 閉鎖 -38dB / アタック 5ms
ゲイン:+3dB
コンプレッサー:比率 4:1 / 閾値 -16dB / アタック 5ms / リリース 100ms / 出力 +3dB
リミッター:閾値 -3dB / リリース 80ms
トーク・雑談配信向け#
ノイズ抑制:RNNoise
ノイズゲート:開放 -35dB / 閉鎖 -40dB / アタック 8ms
ゲイン:+2dB
コンプレッサー:比率 3:1 / 閾値 -18dB / アタック 6ms / リリース 120ms / 出力 +2dB
リミッター:閾値 -3dB / リリース 100ms
歌配信向け#
ノイズ抑制:Speex -20dB(RNNoiseは歌声を削ることがある)
ノイズゲート:使用しない(ブレス音も表現の一部)
ゲイン:+2dB
コンプレッサー:比率 2:1 / 閾値 -20dB / アタック 10ms / リリース 150ms / 出力 +2dB
リミッター:閾値 -1dB / リリース 60ms
よくある失敗と対策#
失敗1:フィルターの順序が間違っている#
コンプレッサーの後にノイズ抑制を入れると、 コンプレッサーが増幅したノイズを除去しきれないことがあります。 必ず「ノイズ除去→ダイナミクス処理」の順序を守りましょう。
失敗2:コンプレッサーのかけすぎ#
比率を10:1以上にすると、声が極端に平坦になり「ラジオの機械音声」のように不自然になります。 最大でも6:1程度に抑えましょう。
失敗3:リミッターを設定していない#
コンプレッサーだけでは突発的な大きな音を完全に制御できません。 リミッターは必ず最後に設置し、クリッピングを防止しましょう。
失敗4:ゲインの二重設定#
マイク本体のゲインとOBSのゲインフィルターの両方を高く設定すると、ノイズが増幅されます。 まずマイク本体で適切なゲインを設定し、OBS側は微調整に留めましょう。
まとめ#
OBSの音声フィルター設定で押さえるべきポイントです。
- フィルターの適用順序:ノイズ抑制→ノイズゲート→ゲイン→コンプレッサー→リミッター
- ノイズ抑制はRNNoiseを選択(高品質AIノイズ除去)3. ノイズゲートは閉鎖/開放閾値の差を3〜5dBに設定4. コンプレッサーは比率3:1〜4:1が標準5. リミッターの閾値は-3dBでヘッドルームを確保6. BGMはDeckReadyで事前にラウドネス統一する7. 設定後は必ずテスト録音で動作を確認する
適切なフィルター設定は、高価な機材がなくても配信音質を大幅に向上させます。 ぜひ今日から設定を見直してみてください。
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